場の量子論はどのように作るべきか?

結論から言うと、場の量子論をどのように構成することがベストなのか、は未知の問題である。 特に、数学的に厳密に場の量子論を構成することは数理物理学の一つのテーマであるほど重要である。 ただ、素人が趣味でやるには壮大すぎる。 なので、ここではあまり数学的な厳密さにこだわらずに、とにかく物理的に意味のある量を計算できる枠組みを作ることを目標としてみる。 手元にある場の量子論を何冊か眺めてみても、計算するための技術的な話や道具の用意から話を始めているものが多い。 おそらく、場の量子論自体がまだ発展途上の理論であるので、実用的な話から入る以外に方法がないのかもしれない。 この辺りの事情が量子力学を勉強するときとは異なっている。

また、物理量を計算するためには、結構な用意が必要であることも量子力学の時と異なっている(場の量子化やWickの定理、プロパゲーターの定義、S行列、Feynmanダイアグラムなど)。 なので、量子力学を順調に勉強してきて、次は場の理論をやってみようと思っても同じ調子では上手くいかないことが多いのだと思う(自分はそうでした)。

物理量を計算できる枠組みをつくることを目標として、どのように進めていくかを簡単に決めておく。 先ほども述べたが、場の量子論をどのように作るのが良いのかは難しい問題なので深追いしない。ただ、ここでのベストは決めておきたい。 自分は場の量子論を始めて勉強したときに敷居の高さを感じたので、なるだけ初学者に分かりやすい形にしたい。 第一、いまだに理解したとは程遠いので自分のためにもあとから見てわかりやすい形にしたい。

そのためには初めから終わりまでをできるだけ短くするのがいいだろう。 できるだけ短くするには扱う問題を絞って、重要な概念のみをピックアップしていくのがいいかと思う。

また、場の量子論自体をどういう位置づけでとらえておくのが良いだろうか。 数学的に厳密な構築の方法なども確立していないなら、先に述べたようにいっそのこと物理量を計算できる枠組みとして考えてもいいだろう。 進めていくうちにもっといいやり方が見つかればその時に説明しなおせばいい。

ここでの場の量子論は、量子力学と特殊相対論を含む理論で、観測可能な物理量を計算できるもの、であるとしよう。 ということで、ここでの大目標は、「量子力学と特殊相対論を含む理論で、観測可能な物理量を計算できるものをできるだけシンプルなロジックで短く作ること」である。 そのために、ひとつ前の記事でも述べたが先ずは量子電磁気学から始めてみたい。

次に、作ろうとしている場の量子論が最低限満たすべき性質を整理しておこう。 ざっと考えてみると以下のような性質が必要だと思う。

  1. 量子力学と特殊相対論を含む理論であること
  2. 粒子の生成消滅を記述できること
  3. 粒子と場を一つの枠組みで扱えること
  4. 理論が因果律を破らないこと(光の速度を超えるものはないこと)
  5. 理論が座標系の取り方によらないこと
  6. 理論が導く結果が実験結果を再現すること

性質1, 2, 3は前の記事でも述べた場の量子論の重要なモチベーションである。 性質4, 5, 6は物理的に意味のある理論が備えておくべき性質である。 未来から過去へ情報が伝わるようなことはないように思えるし(性質4)、物理法則はどんな場所でも同じであるだろう(性質5)。 また、実験と一致しなければどんなに数学的に美しい理論であっても物理的な意味はない(性質6)。 したがって、以上の性質を満たす場の量子論を作ること考えていく。 それは以降の記事で進めることにしようと思う。


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