Rashbaスピン軌道相互作用

スピン軌道相互作用はスピン自由度と運動量自由度を結びつける効果を持つことから,スピントロニクスの分野で電子の運動量制御によるスピン流の制御などへの応用に向けて,注目が集まっている.ここではそのなかでも重要なRashbaスピン軌道相互作用について簡単に解説する.

スピン軌道力を持つ系のHamiltonianは

\begin{align} \hat{H}_{so} = \frac{\bm{p}^2}{2m} + \bm{s} \cdot (\bm{\alpha} \times \bm{p}) \end{align}

で表される.ここで自由粒子の場合と比べて,運動量に対する反転対称性が破れていることに注意. また,\( \bm{\alpha} \)は電場と解釈できる定数であるとする.この定数によって系の非等方性とスピン軌道相互作用の大きさが決まる.実験的には,外部から電場を調節してやることでこのスピン軌道相互作用の大きさを変えることができる. 2次元系を考え,これを

\begin{align} \bm{\alpha} = (\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3) \rightarrow (0,0,\alpha) \end{align}

とするとRashba型のスピン軌道相互作用となり

\begin{align} \hat{H}_{so} = \frac{\bm{p}^2}{2m} + \alpha (s_x p_y - s_y p_x) \end{align}

と表せる. 実際このようなタイプのスピン軌道相互作用は半導体接合面などの反転対象性が破れた2次元面に現れることがある. スピン演算子はパウリ行列を使って

\begin{align} s_1 &=\frac{1}{2} \sigma_1 = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{rr} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) \\ s_2 &= \frac{1}{2} \sigma_2 = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{rr} 0 & -i \\ i & 0 \end{array} \right) \\ s_3 &=\frac{1}{2} \sigma_3 = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{rr} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array} \right) \end{align}

と表せるのでハミルトニアンは

\begin{align} \nonumber H_{so} &= \frac{\bm{p}^2}{2m} + \bm{\alpha} \cdot (\bm{p} \times \bm{s}) \\ \nonumber &= \frac{\bm{p}^2}{2m} I_2 +\frac{1}{2} \alpha ( p_1 \sigma_2 - p_2 \sigma_1 ) \\ \nonumber &= \left( \begin{array}{rr} \frac{\bm{p}^2}{2m} & 0 \\ 0 & \frac{\bm{p}^2}{2m} \end{array} \right) + \frac{1}{2} \alpha \left[ \left( \begin{array}{rr} 0 & -ip_1 \\ ip_1 & 0 \end{array} \right) - \left( \begin{array}{rr} 0 & p_2 \\ p_2 & 0 \end{array} \right) \right] \\ &=\left( \begin{array}{rr} \frac{\bm{p}^2}{2m} & -\frac{i}{2} \alpha p_- \\ \frac{i}{2} \alpha p_+ & \frac{\bm{p}^2}{2m} \end{array} \right) \end{align}

となる.ただし

\begin{align} p_{\pm} =p_1 \pm ip_2 \end{align}

である. また

\begin{align} p_{\perp} = \sqrt{p_- p_+} \end{align}

として この行列の固有値を求めると

\begin{align} E_{\pm} = \frac{\bm{p}^2}{2m} \pm \frac{1}{2} \alpha p_{\perp} \end{align}

となる.この$\pm$はスピン軌道相互作用による有効磁場$\bm{\alpha} \times \bm{p}$方向に対するスピンのアップ・ダウンを表す. $E_+$の場合は$p=0$で最小値を持つが, $E_-$の場合は$p\neq 0$で縮退した極小値を持つ.

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