書評 新版 演習 場の量子論

著者:柏太郎

出版社:サイエンス社

本書は数少ない場の量子論の演習書です。各章に例題と練習問題があり、読者は問題に取り組みながら理解を深めていくことができます。

一般的な場の量子論のテキストは500ページ以上の大作であることが多く、初学者にとってはなかなか理論の全貌をつかむことが難しいです。そのせいでモチベーションを維持することができずに挫折してしまうこともあります。また、本業や研究と平行して勉強する際は、なるだけ短時間で効率よく理解する工夫も必要になってきます。

本書は解答部分を除くと全体で170ページと比較的コンパクトにまとまっており、そのために取り上げるトピックは絞られていますが、場の量子化からゲージ場の理論まで広く扱っている印象です。序文でも述べられていますが、場の量子論で重要な、真空の決定にかかわる有効作用の議論を演習問題を通して理解できるのはよいと思いました。

解答もついているので、詰まった時にも自分で解消できる可能性が高く、気になる内容のみをピンポイントで理解する様な使い方もできるかと思います。特にピンポイントで部分読みがしやすいというのは演習書ならでは性質です。

ただ、個人的には一度はどこかで大部のテキストを読み通した方が理解が深まるかと思っているので、本書は初学者の学習の序盤での補助的な一冊や、他の本で分からなかった計算を確認するといった用途になるでしょうか。


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