書評 アカデミアを離れてみたら-博士、道なき道をゆく-
著者:岩波書店編集部
出版社:岩波書店
本書は、大学院の博士課程を修了して博士号を取得された21人の方に対してその後の進路をそれぞれにインタビューし、まとめたものです。各人の博士号取得後の進路はとても幅広く、一般企業に務める方や教育現場で活躍される方、組織に属さず独立される方、研究活動の手助けをされる方、アカデミアとそれ以外の職を行き来する方、など様々で、博士の可能性を感じさせられます。それぞれの方がどのような経緯で現在のポジションにいるのかを10ページ程度使って読者に語りかける形で編集されているので、自分が実際にインタビューしてまわったような感覚になります。
現状、博士の待遇については賛否あり、ネットの記事やツイッターなどのSNSでも体験談などから情報を得ることができますが、上記のようにまとまった形で博士の動向を知る機会は貴重です。したがって、博士取得後の進路選択に悩んでいる修士・博士課程の方や現在アカデミアで活躍しているが今後の身の振り方に迷っている方におすすめできます(私自身、非常に勉強になりましたので)。
最後に個人的な感想を書きます。全体を通して印象的だったことは、皆さんが「これがやりたい」という芯をもって動いている点でした。博士を取るということは自分で研究して論文を書く能力があることの証明で、研究するには目標設定と自己管理が必要だと私は考えているので、芯があることは必然的な結果なのかもしれません。ただ、情報が氾濫している現代社会で自分の目的を見失わずにいるには、常に自分に、自分がやりたいことは何なのか、問い続けていく必要があると思います。ここで語られているみなさんはそれができているように見えたので、尊敬の念に堪えませんでした。
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